職場に相談できる人がいない。困っていることがあるのに、誰にどう切り出せばいいか分からないまま日が過ぎていく。この状態を「自分に人望がないから」と受け取っている人は多いです。ただ実際に足りていないのは、相談を1人の相手にまとめて持っていこうとしている設計のほうです。見ていくのは3つ。相談の中身を4種類に分け、社内で頼める範囲と社外で足す先を分け、頼み方の型を決める。信頼できる1人を探し当てる必要はありません。
相談できる人がいないのは、人望の問題なのか
相談相手が見つからない状態は、相談の中身を分けずに探しているときに起きやすくなります。
「相談できる人」と考えるとき、多くの人は1人の相手を思い浮かべます。話を聞いてくれて、仕事の中身も分かっていて、口が堅くて、利害が絡まない人。この4つを同時に満たす相手は、職場にはまず存在しません。存在しないものを探しているので、見つからないのは当然です。
条件を分けると話が変わります。仕事の手順だけを聞く相手、判断の是非だけを聞く相手、感情の置き場になる相手は、別々でよく、しかも全員が同じ職場にいる必要もありません。
「相談できる人がいない」が「この件を持っていく先がまだ決まっていない」に変わると、動けるようになります。
相談の中身を4種類に分ける
持っていく先を決めるために、まず中身を分けます。種類が違えば、適した相手も違います。
- 手順:やり方が分からない。誰がやっても同じ答えになる種類です。
- 判断:どちらを選ぶべきか。前提を共有していないと答えが出ません。
- 利害:評価、異動、待遇。相手の立場によって答えが変わります。
- 感情:つらい、しんどい。答えを出すこと自体が目的から外れます。
自分がいま抱えているものが、このどれなのかを先に決めてください。ここが混ざったまま切り出すと、手順を聞きたかったのに励まされたり、感情を置きたかったのに解決策を並べられたりします。相手が悪いわけではなく、何を求めているかが伝わっていないだけです。
いま持っていける先があるかを確かめる5項目
当てはまるものに印をつけてください。
採点するための項目ではありません。もう薄々感じていることを、言葉の形にして外に出すための項目です。
- 手順を聞ける相手が、社内に1人はいる
- 判断について「どう思いますか」と聞ける相手が、社内に1人はいる
- 評価や異動の話を持っていける先を知っている
- 仕事のつらさを話せる相手が、社外に1人はいる
- 相談したあとで、後悔した経験がある
分かれ目は次のとおりです。
- 1にだけ印:よくある状態です。次の節の社内・社外の割り振りから始めてください。
- 1・2に印:社内は足りています。足すとしたら4のほう、社外の置き場です。
- 3に印がない:ほとんどの人がここです。会社の相談窓口の存在を確認するところから始まります。
- 5に印:過去の経験が次の相談を止めています。相手の選び方を変える必要があり、同じ相手に持っていかないのが先です。
印が0〜1個でも問題ありません。設計がまだない状態というだけで、人望とは別の話です。
社内で頼める範囲と、社外で足すもの
種類ごとに、持っていける先はだいたい決まっています。
手順は、社内のほうが早いです。相手は仲がよい人である必要がなく、その業務を知っている人であれば足ります。むしろ関係が薄い相手のほうが、聞くこと自体の心理的な負荷が低いこともあります。
判断は、直属の上司が第一候補です。合わない場合は、隣の部署で同じ役割の人、あるいは前任者が使えます。
利害は、社内の相談窓口、人事、労働組合が該当します。ここを個人の関係で処理しようとすると、あとで立場が絡んで面倒になります。ハラスメントに触れる内容なら、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーが無料で使えます。
感情は、社外に置いたほうが安全です。社内の相手に置くと、その人の異動や関係の変化で、置き場ごと消えます。友人、家族、あるいは会社が契約しているEAP(従業員支援プログラム)の窓口が該当します。契約の有無は、就業規則か社内ポータルで確認できます。
4つのうち3つは、あなたと親しい相手を必要としていません。ここが分かると、探す対象がぐっと狭くなります。
頼み方の型
切り出しにくさの多くは、相手に何を求めているかを言わずに始めることから来ています。最初の一文に入れるものは決まっています。
手順を聞くとき 「◯◯のやり方で詰まっていて、5分だけ見てもらえますか」
判断を聞くとき 「AとBで迷っています。決めるのは自分でやるので、見落としがないか意見をもらえますか」
感情を置くとき 「解決策はいらなくて、聞いてもらうだけでいいんですが」
3つとも、所要時間か求めるものを先に言っています。これがあると、相手は引き受けるかどうかを判断できます。相手が断りやすい形にしておくほうが、結果として引き受けてもらえる確率は上がります。
なお、頼むこと自体に強い抵抗があるなら、扱う対象がひとつ手前にあります。そこは人に頼るのが苦手なときのほうが近い話をしています。
相談しないまま置いておける期間
全部をいま解決する必要はありません。ただ、置いておける期間には目安があります。
手順の詰まりは、1週間が目安です。それ以上は自力で解けない可能性が高く、遅れが実害に変わります。判断は、決める期限から逆算して、その半分の時点までが目安です。利害と感情には期限がありませんが、眠れない日が続くようなら期間の話から外れます。
期限を決めておくと、「もう少し様子を見よう」が無限に伸びるのを防げます。
専門家に相談する境界
次のどれかが続いているなら、職場の設計の話から外れます。
- 出勤前に動悸や吐き気が出る日が、週の半分を超えている
- 2週間以上、気分の落ち込みが続いている
- 眠れない、または朝早く目が覚める日が続いている
- 仕事以外のことにも興味が持てなくなっている
心療内科や、お住まいの自治体の精神保健福祉センターで相談してください。仕事に行くこと自体がつらい状態が続いているなら、仕事に行きたくない朝が続くときのほうが先に読む記事になります。
よくある質問
相談したら評価が下がりませんか
手順の相談で評価が下がることは、まずありません。むしろ止まったまま期限を過ぎるほうが、実害として見えます。利害に関わる相談は窓口を選ぶ話で、個人に持っていかなければ評価とは切り離せます。
上司が相談しにくい相手です
判断の相談先は、隣の部署の同じ役割の人や前任者でも成り立ちます。上司にしか持っていけないのは、評価と業務量の配分に関わるものだけです。それ以外は相手を変えられます。
社外に話すのは、情報の面で問題になりませんか
具体的な社名・製品名・数字を出さずに、状況の構造だけを話せば問題になりません。感情を置くのに固有名詞は要りません。
相談できる人ができるまで、どのくらいかかりますか
「1人見つける」と考えると長くかかります。4種類のうち1つでも持っていく先が決まれば、その分は今週から動きます。全部の枠が埋まるまでは数ヶ月かかることもありますが、困っている度合いは最初の1枠でかなり下がります。

