成長している気がしない。毎日同じことを繰り返しているだけに見えて、この1年で何が変わったのか自分でも言えない。そう思って検索した夜は、たいてい自分の頭の中だけで自分を採点しています。ただ、その採点に使っている目盛りは、あなたと一緒に動いています。伸びた分だけ基準も上がるので、差が手元に残らない。だから最初にやるのは、外に置いた基準で確かめることです。1年前の自分に、いまの仕事をそのまま渡したらどうなるか。ここを通すと、見えていないだけの状態と、実際に止まっている状態が分かれます。手を入れる必要があるのは、後者だけです。

同じ毎日に見えるのは、目盛りも一緒に上がるから

成長を測るときにあなたが使っている物差しは、あなたの成長に合わせて伸びています。 去年できなかったことができるようになると、それは「できて当たり前のこと」の側へ移ります。

半年前は手が止まっていた作業が、いまは考えずに終わる。終わるようになった瞬間、その作業はあなたの中で簡単な仕事に分類し直されます。だから手元に残るのは、いまだにできないことのリストばかりになります。できるようになったことは、そのリストから静かに抜けていきます。

この仕組みがある限り、内側から見た成長の線は、いつも平らに見えます。実際には登っていても、足元の地面が一緒に持ち上がるので、高さが感じられない。夜にしんどくなるのは、努力の量というより、この見え方のせいであることが多いです。

仕事の伸びは、きれいな段差では来ません。3か月なにも変わらないように見えて、ある週に急に処理が速くなる。その週に自分を見ていなければ、変化は記録されないまま流れていきます。

1年前の自分に、いまの仕事を渡せるか

内側の目盛りを外すには、時点をずらした比較がいちばん早い。 去年の同じ月の自分を呼んできて、いまのあなたの1週間をそのまま持たせてみます。

頭の中で「成長したかな」と考えるのはやめて、紙に3つだけ書き出してください。

  • 今週やった仕事のうち、いちばん時間がかかったもの
  • 今週、誰にも確認せずに自分で決めたこと
  • 今週、他の人から回ってきた相談や質問

書けたら、1年前の自分に順番に渡します。1年前のあなたは、この作業を同じ時間で終えられたか。この判断を、誰にも聞かずに下せたか。この質問を、自分のところに持ってこられていたか。

3つのうち1つでも「無理だった」と出たなら、伸びています。とくに3つ目は強い材料になります。相談が回ってくるというのは、周りがあなたを「聞けば分かる人」に分類し直したということだからです。この分類の変更は、本人にはほとんど通知されません。

比べる相手を同期や同年代に置いている間は、この判定ができません。他人からは到達点だけが見えて、この1年で動いた幅が見えないからです。並べる相手を過去の自分に固定するのが、この方法の要になります。

同年代の様子を見るたびに息が詰まるところで止まっているなら、先に来るのは人と比べてしまうのをどう扱うかのほうです。ここでは比較を計測の道具として使いますが、その道具がいま刃物として働いているなら、先に痛みを下げる必要があります。

見えていないだけなのかを確かめる項目

ここで見るのは、この1年で変わったところが1つでもあるかどうかです。 印が多いほど、伸びているのに気づけていない状態に近づきます。

読みながら、当てはまるものに印をつけてください。

採点するための項目ではありません。もう薄々感じていることを、言葉の形にして外に出すための項目です。

  • 1年前は手が止まっていた作業を、いまは止まらずに終えられる
  • 去年より、判断を人に確認する回数が減った
  • 後輩や新しく入った人から、質問が来るようになった
  • この1年で、担当する範囲か関わる相手が一度でも変わった
  • 去年は知らなかった道具や言葉を、いま仕事の中で使っている
  • 失敗したあとの立て直しが、去年より早くなった
  • 自分の仕事を、社外の人に通じる言葉で説明できる

印の数より、どこに印がないかを見ます。

  • 4個以上に印:伸びは出ています。気づく機会がなかっただけの状態です。あとの記録の話に進んでください
  • 1〜3個に印:一部だけ動いています。動いていない領域を特定する段階です
  • 印が0〜1個で、その状態が2年以上:環境の側が止まっている可能性があります。担当の輪郭から手を入れます
  • 7に印がない:伸びてはいるのに、説明する言葉が追いついていません。社外の基準に当てる節が効きます

印が少ないとき、そこに映っているのは能力より配置です。置かれた場所が2年動いていないなら、動きようがなかった、というだけのことです。

本当に止まっているとき、先に触るのは担当の輪郭

同じ場所に立ち続けている感覚があるなら、動かすのは努力の量より、任されている範囲のほうです。 同じ仕事を同じ質でこなしている限り、必要になる能力は増えません。

範囲の広げ方には、手を挙げる前にできる順番があります。

いまの仕事の前後を、1工程だけ引き受ける

自分の担当が作る工程なら、その前の要件を聞く場に同席する。あるいは、渡したあとの反応を受け取る側に回る。工程が1つ増えるだけで、判断に使える材料が変わります。ここは「見ていていいですか」の一言で入れることが多い場所です。

やり方を決める側に、一度立つ

決まった手順をこなすのと、その手順を作るのでは、使う部分が別です。小さなもので足ります。新しく入った人向けの手順書を1本書く。定例の進め方を1つだけ変えてみる。作った側に回った経験は、別の職場でも説明できる形で残ります。

まだ名前のついていない仕事を拾う

どの部署の担当とも決まっていない、宙に浮いた作業が、たいていの職場にあります。それを拾った人が、その領域の担当になります。範囲を広げるいちばん静かな方法です。

どれも労働時間を足す話にはしていません。すでに持っている仕事を1つ手放す相談と、同じ時期に進めるほうが続きます。

1年やってみて何も変わらないなら、それは自分の限界より環境の情報です。ただ、そこから辞める話に直結させる必要はありません。同じ会社でも、部署や担当が変われば景色は変わります。迷いがこの1年の範囲を超えて、数年先の設計にまで伸びてきたなら、見る単位が変わります。30代でキャリアに迷ったときで使う4つの軸のほうが近い。この記事は1年の見え方、あちらは数年の設計を見ています。

社外の基準に当てて、目盛りを借りる

自分の目盛りが伸びてしまうなら、外から借りてくるほうが早い。 社外の基準は、あなたの成長に合わせて動いてくれません。

借り方は3つあります。どれも在職のまま、費用をかけずにできます。

求人票を10件、必須要件の欄だけ読む

自分の職種と経験年数で検索して、必須要件だけを拾います。応募する必要はありません。書かれている要件のうち、いま何割を自分の経験で説明できるか。この割合を半年ごとに出すと、動いているかどうかが数字の形になります。

社外の人に、いまの仕事を5分で説明する

前の職場の同僚でも、別の業界の友人でも足ります。社内の言葉を1つも使わずに話せるか。詰まった箇所が、そのまま外に持ち出せていない部分です。相手から出た質問が、自分の穴の地図になります。

同じ職種の人が書いた記事か発表資料を、1本読む

読んで半分も分からないなら、伸びしろがそこにあります。ほとんど知っている内容なら、いまの環境から得られるものは薄くなってきています。

外に当てると、落ち込むこともあります。ただ、落ち込む形で出てきたものも情報です。輪郭のある不足は手が打てますが、「たぶん止まっている」という漠然とした感覚は、夜のあいだ何度でも戻ってきます。

求人票を開く気力すら湧かないなら、頑張れない自分を責めるときに減っているものの話が先に来ます。測る作業にも体力が要ります。

記録が、来年の夜の材料になる

同じ夜を来年も繰り返さないために、いまから残しておけるものがあります。 記憶は、できるようになったことから先に消えていきます。

月に一度、10分だけ書きます。書くのは4つです。

  • 今月はじめてやった作業と、その日付
  • 今月、時間が短くなった作業(前は何分かかって、いまは何分か)
  • 誰かから来た質問と、それに答えられたかどうか
  • うまくいかなかったことと、その理由についていま思っていること

会社の共有フォルダは避けて、自分の手元に置いてください。異動や退職で見られなくなると、積み上げた分が消えます。

12か月ぶん貯まると、去年の自分と今年の自分を、記憶に頼らず並べられます。成長が見えないという感覚そのものが、来年は起きにくくなります。書く日を決めておくと、月に一度だけ自分の1か月を外から眺める時間ができます。渦中にいるあいだは、進んだ距離が測れません。

専門家に相談する境界

成長の話として扱える範囲を、外れている状態があります。次に挙げるどれかが続いているなら、先に見るのは体と生活のほうです。

  • 朝、起き上がるまでに時間がかかる日が、週の半分を超えている
  • 好きだったことに興味が湧かない状態が、1か月以上続いている
  • 食欲や睡眠が、自分でも分かるほど変わった
  • 自分には価値がないという考えが、日中も頭から離れない

こうした状態では、伸びを正しく測れません。認知が低く見積もる方向へ傾くからです。厚生労働省の「こころの耳」には働く人向けの電話相談とSNS相談があり、無料で、会社を通さずに使えます。睡眠と食欲の変化が2週間より長く続いているなら、心療内科の受診を検討してください。各地の精神保健福祉センターにも、費用のかからない相談窓口があります。

キャリアの部分だけを誰かと整理したいなら、厚生労働省のキャリア形成・リスキリング推進事業で、無料のキャリアコンサルティングが受けられます。在職中でも申し込めて、勤め先を通す必要はありません。

よくある質問

3年同じ部署にいます。それだけで成長が止まったことになりますか

なりません。材料になるのは年数より、1年前の自分に渡せるかどうかです。同じ部署でも、扱う案件の難度や関わる相手が変わっていれば、能力の側は動いています。3年のあいだ担当も難度も相手も動いていないなら、そこではじめて材料になります。

周りは伸びているのに、自分だけ止まって見えます

見えている情報の量が違います。他人からは結果だけが届き、自分については途中の詰まりが全部見えています。同じ条件で並べられるのは、相手の1年前と現在の両方を知っている場合だけです。知らないなら、判断に足りる材料がまだありません。

資格の勉強をすれば、成長している実感は戻りますか

戻る場合と、戻らない場合があります。実感が戻るのは、学んだことを仕事の中で1回でも使ったときです。使う場面のない資格は、達成感は残っても、成長の実感には変わりにくい。先に、いまの仕事で使える範囲かどうかを見てください。

成長を感じないまま働き続けるのは、まずいことですか

期間によります。半年なら、たいていの仕事に来る普通の時期です。2年を超えて担当も難度も相手も動いていないなら、環境側の情報として扱えます。ただ、それがそのまま辞める理由になるとは限りません。担当の輪郭を広げる交渉を先に試して、動くかどうかを見る余地があります。