通知を確認するだけのつもりで開いて、気づいたら30分が経っていて、伏せたスマホの横で気持ちが少し重くなっている。そんな夜が何度か続くと、SNSに時間を持っていかれる自分の弱さの話に思えてきます。ただ、疲れの出どころは画面の中身より、開く直前と閉じたあとに散らばっていることのほうが多いです。見ていくのは3つ。指が伸びる前に何が起きているか、スクロール中に頭が何を処理しているか、閉じてからも動き続けるものは何か。局面ごとに、打てる手が変わります。
開く直前に、たいてい別のことが起きている
SNSを開く動作は、単独では始まりません。指が伸びる数十秒前に、ほぼ必ず別の何かが起きています。
手持ち無沙汰、待ち時間、明日の予定への構え、眠ろうとしたのに頭が静まらない感じ。そういう状態のときに、いちばん近くにあって、いちばん反応が早いものがSNSです。落ち着かなさの受け皿として選ばれているだけで、内容が見たかった夜はそんなに多くありません。
だから「見るのをやめる」は効きにくいのだと思います。開く動作を止めても、その手前にある状態はそのまま残ります。行き先を失った落ち着かなさが、別の形で戻ってくるだけになります。
先に効くのは、開いた理由に名前をつけるほうです。「暇だったから」で始まった30分と、「返事が来ないのが気になって開いた」と分かっている30分では、閉じたあとに自分をどう扱うかが変わります。名前がついているほうは、少なくとも自分を責める材料になりにくいです。
返事を待っている夜が繰り返し来ているなら、SNSの設定より手前に扱うものがあります。連絡がこないと不安になるときがその話をしています。
昨夜の一回を、印をつけながら辿ってみる
手がかりは、誰かの投稿の中身より、昨夜のあなた自身の動きのほうに残っています。昨日か、よく覚えている直近の夜をひとつ思い出しながら読んでください。
採点するための項目ではありません。もう薄々感じていることを、言葉の形にして外に出すための項目です。
- 開いた時点で、何を見たいかは決まっていなかった
- 予定していた時間を、1時間以上超えた
- 開いてすぐ、特定の誰かのところへ向かった
- 途中から、自分の生活と見比べる時間が長くなった
- 閉じたあと、何を見ていたか思い出せなかった
- 翌朝になっても、誰かの投稿の一文が頭に残っていた
分かれ目は次のとおりです。
- 1・2に印がついた:重さが出ているのは開く前の局面です。開く動作の手前に一手間を足すほうが早く効きます。
- 3・4に印がついた:見ているあいだに起きています。見る量より、誰が流れてくるかを動かす対象にしてください。
- 5・6に印がついた:閉じたあとも続いている状態です。時間帯そのものを動かすほうが向いています。
- 印がついたのが1つだけ、またはゼロ:SNSの外に理由がある可能性があります。眠れている時間と、ここ1ヶ月の忙しさを先に見てください。
印の数そのものに意味はありません。3つの局面のうち、どこに偏っているかだけを頭の隅に置いておいてください。この先の節は、その偏りに合わせて読み飛ばして構いません。
見ているあいだ、頭は読むより照らし合わせている
スクロール中の消耗は、読んだ文字の量では増えません。増えているのは、一件ごとに走る自分との照らし合わせのほうです。
旅行の写真、昇進の報告、誰かの結婚、機嫌のよさそうな週末。1件あたり1秒で通り過ぎていても、頭はそのたびに「自分は今どのへんにいるか」を引き直しています。10件流れれば10回です。動物の動画を10件見た夜と重さが違うのは、この回数の差です。
そしてこの照らし合わせは、途中で終わりません。「自分は遅れているのか」という問いの答えはタイムラインの中になく、代わりに材料だけが上から補充され続けるからです。判定が出ないまま、判定材料だけが増えていきます。
深夜に重くなりやすいのも同じ理屈です。眠くて判断が鈍っている時間帯に、材料の供給だけが変わらない速度で続きます。同じ投稿を昼に見たら何も感じなかった、というのはよくあることです。
見比べる時間が長くなる相手が決まっているなら、扱う対象は使い方より比較のほうに移ります。人と比べてしまうときが、そちらを扱っています。
書かれていないことを読む時間が、いちばん長引く
表示された文字を読む時間は短くて済みます。長引くのは、書かれていない部分を自分で埋める作業のほうです。
この写真は誰と行ったのか。この日は自分が誘われなかった日か。この言い回しは、こちらに向けられたものか。どれも投稿には書かれていないので、確かめる方法がありません。手段がないぶん、頭は同じ問いを何度も回します。
この作業には、アプリを閉じるという終わり方が用意されていません。画面から離れても材料は記憶の中に残っているので、続きができてしまいます。「見ていたのは10分なのに、一晩ぶん疲れている」の中身は、たいていこれです。
回り始めたことに気づいたら、問いの形だけ確かめてみてください。「本当のところどうなのか」は、外側にしか答えのない形です。「自分は今どうしたいのか」に置き換えると、答えが自分の側に移るので、少なくともそこで止まれます。
止まらない夜もあります。その夜に無理やり結論を出そうとすると、たいてい悪いほうに寄ります。判断は朝に回して構わないのだと思います。
閉じたあとの30分に、その日の重さが決まる
閉じた瞬間に終わる夜と、翌朝まで引きずる夜があります。分かれ目になりやすいのは、閉じたあとの30分に何をしたかのところです。
いちばん重くなるのは、閉じてすぐまた開く動きです。特に自分が何かを投稿した夜。反応の数を見に戻る回数が、そのまま消耗の量になります。
反応の確認には、確認するたびに次の確認の理由が生まれるという性質があります。3だった数字が5になったかどうかは、見に行かなければ発生しない問いです。放っておけば、明日まとめて分かります。
閉じたあとに別の入力を入れると、頭に残る時間は短くなりやすいです。水を飲む、部屋の照明を落とす、明日持っていくものをひとつ出しておく。内容はなんでも構わず、頭が別のものを扱っている時間が数分あればいいという程度の話です。
それでも残る夜はあります。残ったまま眠っても、翌朝には輪郭が薄くなっていることのほうが多いです。夜のうちに片づけきる必要は、たぶんありません。
局面ごとに、打てる手が変わる
手を打つ場所は、ひとつに絞らなくて構いません。印が偏っていた局面に合わせて選ぶほうが、続きます。
開く前が重いとき ホーム画面からアイコンを外す。通知を切る。寝るときはスマホを部屋の外に置く。開く動作の手前に一手間を足すと、「なんとなく」で始まる回数がそのまま減ります。誰にも気づかれず、いつでも戻せます。
見ているあいだが重いとき ミュートを使います。相手に通知されず、フォローも外れないまま、流れてくる量だけが止まります。上の項目で3番に印がついたなら、思い当たる相手をひとりミュートするだけで変わることがあります。
閉じたあとが重いとき 見る時間帯を動かします。眠る直前を避けて、夕方や移動中に寄せる。閉じたあとに別の予定が続く時間帯なら、頭が引きずる余白そのものが短くなります。
全部を今夜のうちに変えなくていいのだと思います。ひとつだけ試して、明日の朝の自分を見てみる。足りなければ、そのとき次を足せば済みます。
疲れが人と会う場面のほうにも出ているなら、SNSの設定では届かない範囲が残ります。人といると疲れるときが、対面の側を扱っています。
専門家に相談する境界
この記事で扱ってきたのは、使い方と時間帯を動かす範囲の話です。次のどれかに心当たりがあるなら、設定で届く範囲から外れます。
- 眠れない夜が、週の半分を超えている
- 気分の落ち込みが2週間以上続き、スマホを見ていない時間も晴れない
- アプリを開こうとすると、動悸や吐き気が出る
- 誰かの投稿を見たあとに、自分を傷つけたい考えが浮かぶ
- 食欲や体重が、短い期間で大きく動いた
どれも気分と体のほうで起きていることです。受診先としては心療内科があります。公的な窓口では、住んでいる自治体の精神保健福祉センターが相談を受け付けています。厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)からも、地域の窓口につながります。
行ってみて「しばらく様子を見ましょう」と言われる日もあります。それもひとつの結果で、判断する役目を専門家に渡せたことに変わりはありません。
深夜に読んでいるなら、番号を控えるところまでで今日は終わりにしていいのだと思います。
よくある質問
SNSをやめられないのは、依存しているということですか
開く回数の多さだけで決まる話ではないので、自分で名前をつける必要はありません。目安になるのは、生活のどこかが実際に削られているかどうかです。眠る時間、仕事の手順、人と会う予定。削られている実感が続いているなら、上の窓口で相談する対象になります。
ミュートやフォロー解除は、相手に伝わりますか
ミュートは相手に通知されず、外から見ても分かりません。フォロー解除はフォロワー一覧に反映されるので気づかれる場合がありますが、気づかれるまでには時間差があるのが普通です。関係をそのままにして流入だけ止めたいなら、ミュートが向いています。
アカウントを消したほうが早いですか
消せば接触はゼロになりますが、開く前の落ち着かなさと、閉じたあとの反芻はそのまま残ることがあります。通知とミュートを先に試して、それでも重さが動かないかを見てから決めるほうが、あとで後悔しにくくなります。
どれくらい経つと軽くなりますか
通知を切ったことによる回数の変化は、当日か翌日に分かります。ミュートで流入を変えた手応えは数日から1週間、時間帯まで動かした変化が分かるのは2週間から1ヶ月先が目安です。日によって波があるのは、普通のことです。

