同僚の退職が続くと、次は自分の番かもしれないという不安が先に立ちます。中身をよく見ると、不安は一つではなく、業務が寄ってくる場面、情報が消える場面、自分も動くか迷う場面に分かれています。場面ごとに何が起きているかを確かめていくと、漠然としていた不安の輪郭がはっきりしてきます。

同僚の退職が続くと、不安になるのはなぜか

退職が続くと不安になるのは、性格の問題ではなく、負荷の変化が目に見えないまま進むからです。誰かが辞めるたびに、その人が担っていた仕事と情報の一部が、残った側に静かに移ります。移った量を誰も数えていないまま重なっていくと、理由が言葉にならない不安として残ります。

不安の正体がはっきりしないうちは、「この会社は大丈夫なのか」という大きな問いに一気に飛びたくなります。ただ、そこに答えを出す材料はまだ手元にありません。先に見るべきは、自分の周りで実際に何が起きているかという、もっと小さい範囲の事実です。

場面を分けて見る理由は、対処が場面ごとに違うからです。業務が寄ってくる場面には担当の整理が効き、情報が消える場面には共有の仕組みが効き、自分も動くか迷う場面には採用や退職理由という外側の事実が効きます。3つをまとめて「なんとなく不安」として抱えていると、どの対処も中途半端になりやすいです。

不安を放置すると、実際の負荷とは別に、疲労感だけが先に積み上がっていきます。エネルギーを不安そのものに使ってしまうと、必要な確認に回せる分が減り、状況の把握がさらに遅れるという流れが起きやすくなります。

仕事が自分のところに集まってくる場面

抜けた人の仕事が、担当を決め直さないまま残った人に流れていく場面です。引き継ぎがあったかどうかで、負荷の重さがまったく違ってきます。

辞める人が出ると、その人の業務は一度どこかに着地させる必要があります。着地先が正式に決まらないと、物理的に近い人や、同じ案件に関わっていた人のところに、なんとなく流れていきます。この流れ方の多くは、担当を決める手間が後回しになった結果として起きます。特定の誰かの失敗が原因になっているわけではないことがほとんどです。

自分の負荷が増えているかどうかを確かめるには、感覚に加えて分量を見るのが早いです。この1ヶ月で新しく担当した業務を書き出し、そのうち何割が「辞めた人の分」かを数えてみてください。3割を超えているなら、一時的な応援として片づけず、担当替えとして扱ったほうが実態に合います。上司にこの数字を持っていくと、話は感想の域を離れ、具体的な事実として伝わります。

このとき、期間を区切っておくことも大事です。「いつまでの応援か」を決めずに引き受けると、そのまま正式な担当として固定されがちです。応援を頼まれた時点で、いつまで続けるかを相手と確認しておくと、あとから担当を戻しやすくなります。

引き受けた業務を戻すときは、理由より先に量を伝えるほうが通りやすいです。「今月はこの業務が何件増えていて、今のペースだと納期に間に合わない」というように、件数を添えて伝えると、調整の必要性として受け取ってもらいやすくなります。

知っていた人が抜けて、情報が消えていく場面

その人しか知らなかった手順や連絡先が、引き継ぎ書に残らないまま抜けていく場面です。属人化していた業務ほど、抜けたあとに気づきます。

在職中は誰も困らないので、手順を文書にする動機が生まれません。その人がいなくなって初めて、あの作業はどうやっていたのか、あの取引先の担当者は誰だったのかが分からなくなります。これは、日々の忙しさの中で共有が後回しになった結果であることがほとんどです。特定の誰かの落ち度として扱う必要はありません。

確かめられることは、引き継ぎ資料が実際にどれだけ残っているかです。直近で辞めた人について、業務手順書や連絡先一覧が更新された形で残っているかを確認してください。残っていないなら、次に同じ立場の人が辞める前に、いま自分が担当している業務を誰かと共有しておく価値があります。頼れる相手が一人に偏っている状態は、職場に相談できる人が少ないときで扱っている状況と近いところがあります。

聞ける相手が複数いるかどうかも、確かめておく価値のある事実です。担当業務について質問できる相手が一人しかいない場合、その一人が抜けた瞬間に情報が止まります。ふだんから、同じ業務を二人以上が部分的にでも把握している状態を作っておくと、次に誰かが辞めても止まる範囲が小さくて済みます。

共有の仕組みは、大がかりなマニュアルである必要はありません。担当業務の手順を数行のメモにして、共有フォルダに置くだけでも、抜けたときの復旧時間はかなり短くなります。5分でできる範囲から始めるほうが、結果的に続けやすいです。

自分も動いたほうがいいのか、迷いが続く場面

周りが辞めていく中で、自分もこのタイミングで動くべきなのかという迷いが続く場面です。この迷いに答えを出すには、感情より先に確かめられる事実があります。

一つは採用の動きです。欠員が出た部署の求人が実際に出ているか、後任がどのくらいの期間で埋まっているかを見てください。求人が出ないまま欠員が放置されている場合と、数週間で後任が決まる場合とでは、残った人にかかる負荷の続き方が違います。

もう一つは退職理由の共通点です。辞めた人たちの理由が、給与や評価制度、特定の上司との関係など、同じところに集まっているなら、構造の問題である可能性が上がります。逆に理由がばらばらなら、たまたま時期が重なっただけということも珍しくありません。理由を直接聞きにくい場合は、退職の挨拶メールの文面や、送別会での話し方からでも、ある程度の傾向はつかめます。

**「会社が危ない」と決めつける前に、この二つを確かめたほうが判断の精度は上がります。**採用の動きと退職理由の共通点は、噂話とは別に、求人サイトや社内の掲示、実際に交わされた会話といった形で確認できる事実です。自分自身の去就について、答えが出ないまま時間が過ぎる感覚に心当たりがあるなら、答えを急がずに材料をそろえる順番も参考になります。

求人の状況は、社内公開の求人一覧や、会社の採用ページを見るだけでも確認できます。直接聞きにくい場合は、人事や総務に一般的な採用計画を尋ねる形にすると、詮索している印象を与えずに済みます。

3つの場面に共通して効くこと

3つの場面はそれぞれ別の対処が要りますが、土台になる確認事項は共通しています。負荷・情報・状況を、感覚ではなく数字や記録として書き出すことです。

確認リストにすると、次のようになります。

  • 負荷:今月引き受けた業務のうち「辞めた人の分」が何割か
  • 情報:直近で辞めた人の引き継ぎ資料が、更新された形で残っているか
  • 状況:欠員部署の求人が出ているか、退職理由が同じところに集まっているか

この3つを並べると、自分がいまどの場面に一番強くいるかが見えてきます。

確認作業には、1週間ほどの期限を区切っておくと収拾がつきやすいです。期限を設けずに続けると、確認そのものが新しい不安の種になってしまうことがあります。

見えてくると、次に必要な行動も自然に絞られます。負荷が中心なら担当の整理を上司に相談する、情報が中心なら共有の仕組みを作る、状況が中心なら採用や制度の動きを一定期間見てから判断する。どれも、確かめた事実を先に置いてから動く順番です。職場の空気そのものが重く感じられる場合は、職場の人間関係がつらいときで、自分に変えられる範囲の見分け方を扱っています。

専門家に相談したほうがいい境界

場面を分けて事実を確かめても不安が軽くならない場合や、次のいずれかに当てはまる場合は、自分で場面を整理する段階を超えています。

  • 出勤前に動悸や強い吐き気など、体の反応が繰り返し出ている
  • 眠れない日、または途中で目が覚めてしまう日が2週間以上続いている
  • 業務量が増えたあと、ミスが目立って増えたと自分でも感じる
  • 誰かと話していても、以前より涙が出やすい、あるいは何も感じにくいと感じる

心療内科や公認心理師のいる相談室、お住まいの自治体の精神保健福祉センターで相談してください。業務量や職場の体制そのものが問題の中心にある場合は、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーも使えます。

よくある質問

同僚の退職が続くのは危険信号ですか

一つの退職だけでは判断材料になりません。退職理由が同じところに集まっているか、欠員の後任が埋まっているかという2点を確かめてから考えるほうが、実態に近い判断ができます。理由がばらばらで後任も順調に決まっているなら、時期が重なっただけの可能性が高いです。

上司に負荷の相談をしても、状況が変わりません

数字を伴わない相談は、感想として流れやすいです。増えた業務のうち何割が「辞めた人の分」かを書き出したうえで、担当の見直しを期限つきで相談してみてください。期限があると、後回しにされにくくなります。それでも変わらない場合は、同じ内容を上司より上の役職や、人事の窓口にも伝えておくと、判断材料が組織側にも残ります。

自分も転職したほうがいいのか、決められません

いま感じている不安だけで結論を出すと、判断が急ぎすぎになりやすいです。採用の動きと退職理由の共通点という事実を確認したうえで、期限を決めて考える進め方のほうが、あとから納得しやすい結論になります。期限は「3ヶ月後、負荷がどうなっているかを見てから」のように、確認できる状態を基準に置くと決めやすくなります。

引き継ぎがないまま業務を引き受けてしまいました

わかる範囲で手順を書き出し、分からない部分は「不明」として残したまま進めてください。全部を完璧に引き継ごうとすると時間がかかりすぎます。次に誰かが同じ立場になったときのために、いま分かったことだけでも記録しておくと、引き継ぎの質が少しずつ上がります。困ったときに聞ける相手を、業務ごとに1人でも決めておくと、抜けが起きても復旧しやすくなります。