日中は平気だったのに、部屋の電気を消したあたりから急に来る。誰かに会いたいというより、いまこの時間に自分のことを気にかけている人がどこにもいない、という感じに近いかもしれません。この記事では、寂しさを感じなくなる方法は扱いません。来る時間帯と条件を先に押さえて、来たときに手を伸ばすものを明るいうちに決めておく。そのうえで、来てからの数十分をどう通り抜けるかまでを見ていきます。
寂しさをなくすことは、目標に置かなくていい
寂しさを感じない状態を目標にすると、感じてしまった夜がそのまま失敗の記録になります。ここで目標に置くのは、来てしまった夜の過ごし方のほうです。
生活を削っているのは寂しさの強さそのものより、来たあとに何をしていいか分からないまま過ぎていく時間のほうです。眠れないまま朝になる。ふだんなら送らない文面を送って、翌日それを悔やむ。人の投稿を見続けて、自分の生活が薄いものに思えてくる。つらさの大きい部分は、たいていここから派生しています。
なので、手をつける場所をずらします。感じ方そのものを消そうとすると、平気だった時間にまで「またあの感じが来るのだろうか」という見張りがつきます。感じ方は残したまま、来た夜にとる行動だけを先に決めておく。先に決めてある部分だけが、軽く済みます。
前提もひとつ置いておきます。ここで扱うのは、深夜に連絡できる相手がいない状態での過ごし方です。その時間に起きていて、事情を知っていて、しかも連絡していい相手。この三つが揃う人は、多くの人にいません。いない前提で組み立てたほうが、実際に使えます。
夜になると急に来るのには、条件がいくつも重なっている
夜の寂しさは、その日に起きた出来事だけで決まっていません。体力の低下と、外からの刺激の少なさと、暗さが同じ時間帯に重なるので、頭の中の考えが実際より大きく感じられます。
夕方以降は、自分をなだめたり考えを切り替えたりする力が落ちています。日中なら流せた記憶が、夜には流せません。同じ内容を思い出しているのに、重さだけが変わります。
入ってくる刺激が減ることも効いています。仕事の連絡も、街の音も、次の予定もない。外側が静かになった分、内側の声だけが相対的に大きくなります。空腹、寝不足、酔いが引いてくる時間帯、部屋の寒さ。身体側の条件も、気づかれないまま重なっています。
そしてスマホがあります。夜は、他人の生活が整った形で流れてくる時間帯です。楽しそうな場面だけが並んでいるところへ、一人で座っている自分の視点から入っていく。この落差は、時間帯とは別に重さを足してきます。
覚えておくと少し楽になるのは、夜に出た結論が翌朝には同じ強さで残らないことが多い、という点です。「自分には誰もいない」という感覚は、条件がそろった夜に強く出る種類のものです。朝になっても同じ濃さで残っているなら、そこは別に扱う対象になります。
寂しさの中身が、特定の場面や失敗の再生に寄っている夜もあります。そちらは過去の失敗が夜に再生されるときに、始まってからの短くし方をまとめてあります。
いつ、どんな夜に来ているのかを先に押さえる
来る時刻には、たいていかたよりがあります。先に確かめるのは寂しさの強さより、時刻と、その直前にしていたことのほうです。
まず、直近で強く来た夜を三回思い出します。記憶があいまいでも、スマホの履歴から拾えるものがあります。就寝時刻、画面を開いていた時間、最後に人と話した時刻、食事の時刻、家に着いた時刻。記憶より、残っている数字のほうが正確です。
三回分を並べると、自分の場合の時間帯が見えてきます。二十二時台に集中する人、電気を消して横になった直後に来る人、休日の日が落ちる時間だけという人。書く量は日付と時刻と一言で足ります。「9/12 23時ごろ 風呂上がり」くらいで、あとから並べたときに読めます。
そのうえで、直前に何がそろっていたかを見ます。よく挙がるのは次のようなものです。
- 予定のない休日の、日が落ちていく時間
- 帰宅してから、声を出して誰とも話していない日
- 画面を閉じた直後の、数分間
- 誰かの近況を知った日の夜。結婚、転職、出産など
- 食事を抜いた日、または夜遅くに一食だけ済ませた日
- お酒を飲んだ日の、酔いが引いてくる時間帯
- 送った連絡に返事が来ないまま、何時間か経った夜
- 体調が落ちている日、または生理前の数日
採点するための項目ではありません。もう薄々感じていることを、言葉の形にして外に出すための項目です。
当てはまるものを二つか三つ選んで、それを自分の引き金と決めます。全部を管理しようとすると続きません。外せる条件があれば外しますが、休日は来るし、日は落ちるし、部屋は静かなままです。外せない前提で、次の準備に進みます。
引き金の上位に画面が来る人は多いところです。閉じたあとに落ちる仕組みのほうは、SNSを見ると疲れる夜はに書いてあります。
明るいうちに、手元へ置くものを決めておく
来てから何をするか考え始めると、そこから消耗が始まります。決めておくのは、その夜に手を伸ばしていいものの一覧です。
置き場所は固定します。スマホのメモでも、引き出しひとつでも構いません。探すところから始まる作りにすると、その夜には使えません。
- 音: その夜にかけていいもの。歌詞のない曲、ラジオ、生活音の配信
- 温度: すぐ作れる温かい飲みもの。手順が三つ以内で終わるもの
- 手を使うもの: 考えなくても続く作業。皿を洗う、洗濯物をたたむ、爪を切る
- 読むもの: 何度も読んだ本や漫画。初めて読むものは、その夜には重いことがあります
- 見ないもの: その時間に開くと確実に長引く画面の名前
- 決めないこと: その夜には決めないと、先に決めておくもの
最後の項目がいちばん効きます。夜に浮かぶ結論には、その時間帯の色がついたまま残ります。連絡先を消す、部屋を引き払う、仕事を辞める、誰かとの関係を切る。この種類は夜には決めないと置いておくと、迷う作業そのものが起きません。
一覧は、その最中の自分でも読み切れる長さに収めます。命令形は入れないほうがいいです。「早く寝なさい」と書いてあると、眠れなかったことだけが記録に残ります。「これを選んでいい」という並べ方にしておくと、開ける夜が増えます。
買い置きも準備のうちです。飲みものと、口に入れやすいものを一つ。夜中に外まで歩く体力が残っていない日のほうが多いからです。
来てからの三十分を、どう通り抜けるか
寂しさの強い部分は、同じ高さのまま続きません。山の上のほうは二十分から四十分ほどで、そこを通り抜けるのが目的になります。
来た瞬間に消そうとすると、消えないこと自体が次の苦しさになります。やることは、高いところを別の作業で埋めて、通り過ぎるのを待つだけです。
- 身体を先に動かす。立つ、窓を開ける、湯を沸かす。頭の中の言葉に返事をしようとすると長引きます
- 体感の温度を変える。温かい飲みもの、シャワー、靴下。身体の感じが変わると、頭のほうも少し動きます
- 音を入れる。無音は、内側の声を大きくする条件のひとつです
- 手を十分だけ使う。終わりが見える作業を、一つだけ選びます
- それでも残っていたら書く。誰にも見せない前提で、来ている感じをそのまま書きます
時計を見ておくと、あとで役に立ちます。来た時刻と、少し引いた時刻をメモしておく。何回か記録すると、自分の場合は何分くらいで通り過ぎるのかが数字で分かります。数字を知っている人は、来た瞬間の絶望の度合いが変わります。
通り抜けられなかった夜があっても構いません。眠れないまま朝を迎えた夜も、記録の上では同じ一行として扱います。うまくやれたかどうかを採点する作りにすると、来ること自体が怖くなります。
翌朝にやることも、一つだけ決めておくと楽です。カーテンを開ける、外の空気に一分あたる、水を飲む。夜のあいだに考えたことを、朝の光の下でもう一度見るための手続きだと思ってください。
来る夜と来ない夜の差が、寂しさより気分の上下で説明できることもあります。その形なら、気分の波が激しいときのほうが近いです。
誰かに連絡したくなった夜の、送る前の一手
深夜に連絡できる相手がいないことは、前提にしておいて構いません。送りたい気持ちのほうは、送らずに置いておく場所を作れば扱えます。
連絡できる相手がいないことを自分の欠点として数え始めると、寂しさに一段重さが乗ります。数えるのをやめると言っても難しいので、代わりに、送らない宛先のほうを用意しておきます。
- 相手の名前を宛名にして、送信しない下書きを書く。書き終わったら閉じて、翌日の昼にもう一度読む
- 通話の代わりに、自分の声を出す。独り言でも、本の音読でも構いません。声を出すと、身体のほうが少し落ち着きます
- 昼に返事が来る場所へ、一言だけ投げておく。夜のうちに反応が要らない形にしておきます
翌日の昼に読み返すと、送らなくてよかったと思うものが半分くらいあります。残り半分は、昼の言葉に直してから送れます。どちらにしても、夜のうちに送らなかったことで失われるものは、ほとんどありません。
深夜に反応が返ってくる場所を探しに行くと、その場では埋まります。ただ、翌朝に残るものが増える形もあるので、行き先は明るい時間に決めておいたほうが安全です。夜に選ぶと、選ぶ基準のほうが下がります。
送ったあとの待ち時間のほうが重い夜もあります。そちらは連絡がこないと不安になるときに、別の見方を書いてあります。
専門家に相談する境界
目安になるのは寂しさの強さより、続いた日数と、生活が回っているかどうかです。自分を傷つける考えが浮かんでいる夜は、日数を待たずに、いま窓口へ連絡してください。
次のような状態があるときは、自分で整理するより先に相談したほうが早く進みます。
- 落ち込みが二週間以上、ほぼ毎日続いている
- 眠れない夜が週の半分を超える。または何時間眠っても回復しない
- 食事、仕事、家事のどれかが、実際に回らなくなっている
- 人と会っている最中でも、寂しさが薄くならない
- お酒や買い物の量が、夜のあいだだけ明らかに増えている
- 誰かの反応がないと、その日の自分の価値が決まってしまう感じが続いている
- 自分を傷つける考えが浮かぶ。これだけは日数に関係なく、今すぐつないでください
日本には、匿名のまま使える公的な窓口があります。夜のあいだも開いているものがあります。
- よりそいホットライン(0120-279-338)24時間受け付けていて、通話料はかかりません。「誰かと話したい」という理由だけでかけて構いません
- こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)かけた地域の公的な相談窓口へつながります
どちらも、話す内容を用意してから電話する場所ではありません。うまく説明できないまま切ってしまっても、それで構いません。何度かけ直しても構いませんし、名前を言う必要もありません。つながるまで時間がかかることもあるので、混んでいたら少し置いてもう一度かけてみてください。
受診を考えるなら、心療内科か精神科、あるいはかかりつけ医で構いません。行き先を選べる状態にないなら、住んでいる自治体の精神保健福祉センターでも受け付けています。どこにつなぐかの整理から相談できます。
ここに書いたのは生活の範囲で自分を見るための手順で、医療の判断を置き換えるものにはなりません。眠れない状態が続いているときは、そこだけ先に相談する形でも構いません。来た時刻のメモや引き金の一覧を持っていくと、短い診察でも話が早く進みます。
よくある質問
一人でいる時間そのものを、減らしたほうがいいですか
予定で埋めると、埋まっていない夜との落差が大きくなることがあります。減らすかどうかより、来た夜の手順が決まっているかのほうが先に効きます。人と会った日の帰り道に強く来る人も、実際にはいます。
友達といても寂しさが消えないのはなぜですか
その場では薄まっても、解散したあとの帰り道や、部屋に入った瞬間に戻ってくることがあります。人の数で決まっているとは限らず、その日の体力や、話した内容の深さのほうが関係している場合が多いです。
夜中に泣いてしまう自分は、おかしいのでしょうか
夜は自分をなだめる力が落ちる時間帯なので、日中なら流せたものが流せなくなります。泣いたあとに眠れているなら、通り抜け方のひとつとして数えて構いません。回数が増えて眠れない夜が続くようなら、そこは相談の目安に入ります。
眠れないまま朝になる夜は、どう過ごせばいいですか
眠ろうとする作業をいったん止めて、暗いまま横になっている時間に切り替えると、身体の消耗は減ります。時計を見る回数を減らすのも効きます。眠れなかった翌日は、判断の要る予定を入れないと先に決めておくと、その夜の影響が翌日で止まります。

