完璧主義でしんどい。この状態を、自分の性格の問題として受け取ってきたかもしれません。ただ、しんどさが出ているのは基準の高さより、全部の場面に同じ高さを当てているところです。見ていくのは3つ。いまの配分を見える形にし、手をかける場面を分ける3つの目安を持ち、下げていい基準と残す基準を仕分ける。基準を捨てる話は出てきません。
完璧主義がしんどいのは、基準の高さより配分で決まる
しんどさの量を決めているのは、基準の高さより同じ高さを何件に当てているかのほうです。1件だけなら高い基準は成立しますし、10件に同時に当てるとどこかで崩れます。
高い基準を持っていること自体は、あなたの仕事や生活の質を支えてきました。数字が合っている、約束の時間を守る、送る前に一度読み返す。この習慣に助けられた場面は、いくつも思い出せます。
範囲が広いと、1件あたりに使える時間が減って、どの1件も自分の基準に届かなくなります。届かない状態が並ぶと、「全部が中途半端だ」という感覚が残ります。そこで多くの人が選ぶのは、基準を見直すより時間を足すほうです。そして睡眠が削られます。
動かす場所は、基準の高さより配分のほうです。同じ量の力を場面ごとに配り直す。これなら、大事にしてきた水準を手放さずに済みます。
全部に同じ水準を当てている状態を、見える形にする
配分の偏りは、手をかけたものを紙に並べて、時間を横に書くと一度で見えます。頭の中だけだと、どれも同じ重さに見えたまま動きません。
直近1週間でやったことを、10件から15件ほど書き出してみてください。仕事の作業に加えて、返信、身支度、部屋の片づけ、家族への連絡も入れます。それぞれの横に、かかった時間と「見た人が何人いたか」を書きます。
書き終えたら、時間の長いものから3つに印をつけます。ここでよく出てくるのが、見た人が0人か1人の作業です。誰も開き直さない資料の体裁、自分しか使わない予定表の色分け。時間が長く、見た人が少ない。この組み合わせが、配分を狂わせています。
やりたいのは分析より、「これに2時間かけていたのか」と自分の目で見るほうです。人に「そこは手を抜いていい」と言われても動かないのに、自分の記録を見ると動きます。
手をかける場面を分ける3つの目安
仕分けに使う材料は3つあって、やり直しにかかるコスト・見る人の数と立場・基準を決めているのが誰かで見ます。この3つで、ほとんどの場面はその場で振り分けられます。
- やり直しにかかるコスト。 出したあとに直せるものは、直せる前提で出していい場面です。社内向けの資料、下書き、最初の相談。取り消しがきかないものは残す側に置きます。契約書、送信済みの謝罪文、数字を伴う報告。
- 見る人の数と立場。 見る人が1人で、中身だけを見る相手なら、体裁は最低限で通ります。人数が多い、決裁が絡む、初対面。この条件が2つ以上重なる場面だけ、体裁を水準に入れます。
- 基準を決めているのが誰か。 締切も出来ばえも自分で決めている作業は、下げても気づく人がいません。時間はここにいちばん多く消えています。
3つとも「残す側」に入った場面だけ、いままでどおりの力をかけてください。実際にやると、残る場面は週に2件か3件に落ち着きます。
いまどこに力を使いすぎているかを確かめる6項目
材料は、あなたの手が実際に動いた場所にあります。直近1ヶ月を思い出して、印をつけてください。
採点するための項目ではありません。もう薄々感じていることを、言葉の形にして外に出すための項目です。
- 提出したあとも、直せる箇所を探してファイルを開き直している
- 誰も見返さない資料の体裁を整えるのに、30分以上かけた週がある
- 「もう少し直してから出したい」と感じて、期限の直前まで手元に置いている
- 家事や身支度など、仕事の外でも同じ水準を守ろうとしている
- 8割できた時点から、残り2割に最初の8割と同じくらいの時間をかけている
- 途中で人に見せるより、形になってから見せたいと思う
分かれ目は次のとおりです。
- 1・5に印がついた:終わらせ方が決まっていない状態です。効くのは、手を入れる時間を増やすことより手を止める合図を決めるほうです。
- 2・4に印がついた:基準が仕事の外まで広がっています。仕分けは仕事の外側から始めると、失うものが少なくて試しやすいです。
- 3・6に印がついた:途中の状態を人に見せる回数が少なくなっています。見せる回数を増やすほど、1件あたりの仕上げ量は下がります。
- 印が0〜1個:しんどさの中心は、基準の置き方の外にあるかもしれません。睡眠時間と抱えている件数を先に見てください。
3つ以上ついたなら、うすうす思っていたとおりだったということです。気のせいで片づけてきたものが、材料になります。
下げても壊れない基準と、残す基準
下げても誰も困らないものと、下げると後で自分の作業が増えるものは、はっきり分かれています。線を引くときは、相手が困るかより、あとで自分に戻ってくる手間の量で見ます。
下げられるほうから挙げます。
- 誰も見返さない議事録の文字装飾や見出しの揃え
- 送信前に3回読み返すうちの、2回目と3回目
- 洗濯物のたたみ方の均一さ、収納の並びの美しさ
- 予定表やタスク表の色分けを揃えること
- 相手の文面より丁寧な返信を、毎回作ること
残すほうはこちらです。
- 数字と日付が合っているかの確認
- 約束した期限を、遅れそうな時点で相手に伝えること
- 相手の名前と肩書きの表記
- 取り消しがきかない文章を、送る前に一度読むこと
上の5つは、下げても相手はほとんど気づきません。返信の丁寧さを1段落減らしても、相手は早く返事が来たことのほうを受け取ります。あなたが整えてきたから、あなたの担当になっているだけです。
下の4つを残す理由は、抜けたときの復旧に時間がかかるからです。日付を間違えた資料は、訂正と再送と説明が戻ってきます。
基準を下げる練習は、1件だけを1週間
最初にやるのは、下げる対象を1件だけ選んで、下げたまま出してみることです。全部を同時に下げると判断の量が増えて、その判断でまた消耗します。
手順は3つです。
- 今週の作業から、下げる対象を1件だけ決めます。上の「下げられるほう」から、いちばん怖くないものを選びます。
- 下げた状態のまま出します。ここで一度、直したくなる気持ちが来ます。5分だけ待ってから、そのまま出してください。
- 3日後に、何が起きたかを1行だけ書きます。「誰も何も言わなかった」でも1行です。
これを4週続けると、メモが4本たまります。この4本を並べて読むのが本番です。下げてよかったかは、頭で予想するより実際に起きたことの記録で決まります。1回だけの判定は、たまたま指摘が入った回に引きずられます。
合図を決めても、出すところまで進まないことがあります。そのとき詰まっているのは基準の高さより、考えが止まらないほうかもしれません。近い話は考えすぎて動けないときにあります。満たせなかった日に自分の価値まで下げてしまうなら、自己肯定感が低い日を作っているものが土台を扱っています。
専門家に相談する境界
ここまでは配分の調整の話です。次のどれかが続いているなら、調整では届かない段階に入っています。
- 基準を満たせなかった日に自分を強く責める状態が、2週間以上続いている
- 眠れない日が週の半分を超えている、または食欲が続けて落ちている
- 確認をやり直す行為が自分で止められず、生活の時間を圧迫している
- 出せないまま期限を過ぎることが続き、仕事や学業に支障が出ている
これらは、気の持ちようより体と気分の状態に関わる話です。心療内科や、お住まいの自治体の精神保健福祉センターに相談してください。夜間にすぐ話せる先がほしいときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)があります。「そこまでの状態ではありません」と言われることもありますが、それを確かめるのも専門家の仕事です。
すでに手が動かなくなっていて、朝起きるところから重い状態が続いているなら、配分の調整より先に回復が要る段階です。近い話は燃え尽き症候群からの回復に必要だったものにあります。
よくある質問
基準を下げると、仕事の質が落ちませんか
落ちるのは、取り消しがきかない作業や数字を扱う作業から下げた場合です。3つの目安で「残す側」に入ったところを触らなければ、外から見える質はほぼ変わりません。むしろ余った時間が残す側に回るので、そちらの精度は上がります。
完璧主義は直したほうがいいですか
直す対象として扱うより、配る対象として扱うほうが現実的です。高い基準は、集中させれば強みとして働きます。しんどさが出ているのは分散させて薄く当てている状態なので、集中させ直すのが対処になります。
手を抜いていいと分かっても、罪悪感が残ります
最初は残ります。減るのは、下げた結果を実際に見たあとです。「何も起きなかった」という記録が3、4件たまると、感じ方が後から追いついてきます。納得が先に来ることは、あまりありません。
どのくらいで楽になりますか
1件下げてみて、その週に何も起きなかったと確認できるまでが最初の一歩です。ここは1週間で届きます。配分そのものが変わって手応えになるまでは、1〜2ヶ月が目安です。

