何が不安なのかと聞かれても答えられないのに、漠然とした不安だけが毎日続いている。そういうとき、警戒する対象が特定されないまま、備える機能のほうだけが動き続けています。見ていく順番は3つあります。身体側の要因を48時間で外し、15分の書き出しで対象に輪郭をつけ、確率と影響の2軸で仕分ける。ここまで進むと、抱えているものの大半は、対処できる課題と対処できない想像に分かれます。
漠然とした不安が消えないのはなぜか
漠然とした不安が消えないのは、備える対象が定まらないので手を打てず、手を打てないので警戒が解けないからです。不安そのものは、まだ起きていない事態に備えるための機能として、正常に働いています。ループが開くのは対象に輪郭がついたときで、輪郭がつくと、警戒は具体的な作業に変わります。
もうひとつ、知っておくと少し楽になることがあります。不安の身体反応は、原因を選びません。心拍が上がる、胃が重い、肩が固まる、眠りが浅い。同じ反応は、睡眠不足でもカフェインでも空腹でも出ます。そして人は、先に身体の感覚があると、後から理由を探しに行きます。「なんとなく不安 → 心配ごとを探す → 見つかったから、不安は正しかったことになる」。この順番で成立してしまう不安があります。
だから順番があります。身体の除外が先で、心理の整理は後です。逆にすると、身体由来の不快感に心理的な理由を探し続けることになって、探すほど心配ごとのリストが伸びていきます。探しても理由が出てこない。そういうとき、自分の内省が足りないのだろうと責めてしまいがちです。たいていは順番の問題です。
不安の向き先はもう分かっていて、それでも同じ考えが頭の中で回り続けている。そういう状態なら、必要な作業はここより一段あとになります。輪郭のある問題を反芻から降ろす話は考えすぎて動けないときのほうが近いです。ここで扱うのは、その手前の、対象がまだ見えていない段階になります。
心理の整理より先に、身体側を48時間だけ見る
心理の整理に入る前に、睡眠・カフェイン・食事の間隔・アルコール・運動量・体調の6項目を、48時間だけ記録します。記録した2日分と、不安が強かった時間帯を並べて、重なりを探します。身体側で説明のつく不安は珍しくないので、ここで消えるなら、心理の作業は要りません。
- 睡眠 何時に寝て何時に起きたか、夜中に目覚めた回数。6時間を下回る日が3日続くと、不安の感じ方が明確に強くなる人が多いです。
- カフェイン 何を何時に飲んだか。体内から半分抜けるまでおよそ5〜6時間かかるので、15時のコーヒーは21時でもまだ半分残っています。動悸や落ち着かなさがあるなら、14時以降をやめて3日観察してみると分かります。
- 食事の間隔 前の食事から何時間空いたか。空腹が長いときの手の震えやそわそわは、心理的な不安と区別がつきにくいところです。
- アルコール 量と時刻。飲んだ翌朝から昼にかけて不安が強くなるパターンは典型的で、本人は前夜の酒と結びつけていないことが多いです。
- 運動量 歩いた時間。屋外を20分歩いた日と、そうでない日を比べます。
- 体調・薬・周期 発熱前、風邪の引き始め、月経周期、新しく飲み始めた薬。
きれいにつける必要はありません。手帳の端でもスマホのメモでも足ります。重なりがあれば、そこを1週間だけ変えて、もう一度見てみます。変えるのは1回に1項目。全部を一度に変えると、何が効いたのか分からなくなるからです。急ぐ理由もありません。
2日分を並べて「これだけのことだったのか」と拍子抜けすることもあります。それでいいのだと思います。理由が身体側にあったなら、心理のほうを掘り返す必要はもうありません。
15分の書き出しで、不安に輪郭がつく
紙を3列に分けて、「何が起きるのが怖いのか」「それはいつ起きるのか」「起きたら具体的に何が困るのか」を15分で埋めていきます。頭の中で整理してから書こうとせず、思いついた順にそのまま書きます。15分でタイマーを止めないと、書き出しは反芻に変わって、不安のほうが強くなります。
やってみると、多くの人が2列目で詰まります。「いつ起きるのか」が書けない。これは重要な情報で、時期を書けない不安は、いま対処する対象から外していい種類です。書けたものと書けなかったものを分けるだけで、リストは半分ほどに減ります。
3列目も効きます。「起きたら何が困るのか」を具体的に書こうとすると、「なんとなく終わり」が「収入が3か月止まる」「あの人ともう話せなくなる」という形に変わります。ここまで来れば、対策を考えられる対象になっています。
コツは、抽象語を1段階だけ下ろすこと。「将来が不安」→「2年後に今の仕事が続けられているか不安」→「今の職種の求人が減っていて、40歳で転職できるか不安」。3段階も下ろす必要はありません。1段階で十分に扱いやすくなります。
1段階下ろした結果、対象が「朝、職場に向かうこと」に集中する人は多いです。そのときは仕事に行きたくない朝のほうが近くなります。輪郭のない不安を扱うのがこの記事で、対象がはっきりしている回避感の切り分けはあちらの範囲です。
「起きる確率」と「起きたときの影響」で仕分ける
書き出した項目に、「1年以内に実際に起きる確率」と「起きたときに生活が受ける打撃」の2軸で0〜10点をつけます。頭の中では同じ大きさに見えていたものが、点にすると4種類に分かれます。最優先は確率も影響も高いもので、そこだけ今週中に最初の一手まで決めます。
点は、自分を採点するための数字ではありません。頭の中で同じ重さになっているものを、外から見るための目盛りです。うまくつけようとしなくて構いません。
分かれ目はここです。
- 確率が高く、影響も大きい → 最優先。今週中に着手する。
- 確率は低いが、影響が壊滅的(病気、事故、失職など) → 一度だけ備えを整えて、以後は考えない対象。貯蓄、保険、健康診断の予約など、一度やれば終わる行動に変換できます。
- 確率は高いが、影響は小さい → 起きるに任せていい。対策のコストのほうが高くつきます。
- 確率も影響も低い → リストから消していい。
点をつけるときに効くのは、確率を実績で見ることです。同じことを過去に何回心配して、実際に何回起きたか。5回心配して1回も起きていないなら、感覚でつけた点数は高すぎます。高すぎたと分かっても、心配していた自分が間違っていたことにはなりません。備える機能が働いていただけです。
対処できる不安は、24時間サイズまで小さくなる
優先度が高いと出た項目について、24時間以内に完了できて30分以内で終わる最初の一手を、1つだけ書きます。一手は解決策の一つ手前、「求人サイトで自分の職種の件数を数える(15分)」くらいの粒度に置きます。粒度が大きいと着手しないまま優先度だけが残って、リストは伸び続けます。
たとえば「収入が不安」に対する一手なら、次のどれかで足ります。
- 今月の固定費を紙に書き出す(30分)
- 求人サイトで自分の職種の件数を数える(15分)
- 貯金残高を確認して、何か月分あるか計算する(10分)
どれも今日できて、終わると不安の中身が具体的な数字に置き換わります。重いものから始める必要はありません。
「あの人との関係が不安」なら、「相手に送るメッセージの下書きを書いて、送らずに一晩置く(15分)」。話し合いの前に、自分が何を伝えたいのかが固まります。
一手を実行しても、不安が減らないことはあります。それで構いません。目的は、対象が動かせるものだったと確かめるところにあるからです。動かせるものが1つある。それだけで、動かせないものへの耐性も上がります。
ただ、この一手すら重くて動けない日が2週間以上続いているなら、順番のほうが違うのだと思います。休んでも戻らない疲れが先にある状態には燃え尽き症候群からの回復が合います。思考の整理を扱うのがこの記事で、体力と意欲の回復を扱うのがあちらです。
対処できない想像の扱い方
確率も時期も特定できない想像は押さえつけても消えないので、心配する時間を毎日15分だけ予約して、そこにまとめます。日中に不安が浮かんだら一行だけメモして、予約した時刻まで持ち越します。予約は夜遅くを避けて夕方に置くと、持ち越しが機能しやすくなります。
やり方はこうです。毎日決まった時刻に15分取る。夜遅くは避ける。時刻が来たらメモを開いて、15分だけ思い切り心配する。タイマーが鳴ったら中断して、別の行動に移る。
持ち越した心配の多くは、時間が来た頃には勢いを失っています。「これはもうどうでもいい」と分かるものも混じります。この方法が効くのは、不安を否定しないからです。「あとでやる」なら、抵抗が起きにくい。
2週間続けると、自分の不安が「時間を置くと消える種類」か「置いても残る種類」かが分かってきます。残る種類だけが、本当に扱う対象です。数は、思っているより少ないはずです。
一人で抱えなくていい状態の目安
強い不安が2週間以上ほぼ毎日続いていて、睡眠・食事・仕事・家事のどれかが実際に回らなくなっているなら、自力の整理より相談が先になります。動悸・息苦しさ・めまいの発作が繰り返し起きる場合も同じです。自分や誰かを傷つける考えが浮かんでいるときは、目安を待たずに、今すぐ窓口へ連絡してください。
日本には、匿名で使える公的な相談窓口があります。
- こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(発信地の都道府県の相談窓口につながります)
- よりそいホットライン 0120-279-338(24時間、通話無料)
どちらも、診断名や手続きの話を用意していく場ではありません。話しながら整理するだけの使い方で構いません。
不安が続くこと自体は珍しくないので、受診が大げさだと考える必要はありません。ここに書いたことは生活の範囲で自分の状態を見るためのもので、診断や治療の代わりにはなりません。強い不安が2週間以上続いているなら、続きに進む前に、心療内科・精神科かかかりつけ医に一度状態を伝えてください。記録した48時間分のメモがあれば、そのまま話が早く進みます。
よくある質問
書き出すと、かえって不安が大きくなる気がします
書き出している最中に一時的に強まるのは、よくあることです。15分で止めれば整理に、30分を超えると反芻に変わりやすいので、タイマーだけは使ったほうが安全です。
ニュースやSNSを見ると不安が強くなるのは関係がありますか
関係します。脅威の情報を短時間に大量に浴びると、自分では対処できない対象だけが増えていきます。就寝前1時間と起床後30分を見ない時間にして、1週間の変化を比べてみると差が出ます。
夜になると不安が強くなるのはなぜですか
夜は疲労で自己制御が落ち、外からの刺激も減るため、頭の中の思考が相対的に大きく感じられます。夜に出た不安は一行メモにして翌日の日中に持ち越し、夜の判断は信用しないと決めておくと楽になります。
誰にも言えない内容の不安はどう扱えばいいですか
誰にも言えない内容ほど、頭の中だけで反復されて実体以上に育ちます。人に見せない前提で紙に書いて捨てる、または匿名の窓口に話す。内容を知られたくない相手とは切り離した場所で扱えば、それで足ります。
